統計でみると、就職氷河期より後の世代も大変なことが判明
近藤絢子著「就職氷河期世代(データで読み解く所得・家族形成・格差)」を読みました。
結論ですが、この就職氷河期という言い方は世代で区分けするための呼び名になっていますが、統計でみるとその後の世代であるITバブル崩壊後からリーマンショックまでの世代も、雇用状況は大して変わっていないことです。
それから後の世代は、生まれついたときからITインフラが整ってきたこと、団塊世代と呼ばれる1947年~1949年世代が定年を迎えたこともあり、雇用は上向いてきたというのが現状だそうです。
しかしこの本は就職氷河期をメインに扱っているので、統計からどのようなことが読み取れたのかデータ分析として読むのは結構面白いと思います。
就職氷河期で一番割を食ったのは、1999年卒から2004年卒の男性
肌感覚でわかると思いますが、この就職氷河期で一番割を食ったのは1999年卒から2004年卒の男性です。
この頃から賃金は急速に落ち始め、かつ非正規雇用に甘んじなくてはいけない人が一気に増加しているようです。
女性の場合は結婚などの特殊要因も絡んでおり、またバブル以前から寿退社システムが会社にあり、女性の扱いは男性に比べると低かったこともあり、賃金等についてはバブル以前と後でそれほど顕著な差が出ていないようです。
自分も就職氷河期卒で当時は内定が決まった山一證券の学生が、会社清算で活動のし直しをしたニュースが話題になっていました。
多分山一證券や、北海道拓殖銀行で内定もらった人のその後の人生を考えると、人によっては非正規に甘んじてしまった人がいてもおかしくありません。
賃金についても、肌感覚で言わせていただくと自分が新入社員で入社した当時、健康保険の負担は2割負担で、ボーナスで社会保険料を徴収されることはありませんでした。
それが入社2~3年目で健康保険の負担は3割に、ボーナスにも社会保険料が課せられるようになったので賃金の低下については、この負担含めて手取り収入が激減した一要因として挙げられます。
これは余談ですが、社会保険は家族を単位として作られたシステムなので、就職氷河期の女性の就職云々以前に高賃金をもらわないと、この後女性の社会保険は単身の場合、大変なことになることは今を見ると想像に難くありません。
現在の非正規、NEET、SNEPについても言及
上記で述べたとおり、社会保険システムが家族を単位に設計されたシステムなので、単身者が増えてきた現在、システムが社会に合わなくなってきた現状を非正規に当てはめたことも書いてあります。
一番の問題は貧困に陥ると、日本はセーフティネットがかなり貧弱で、一度落ちると貧困が加速するということがあります。
中高年のリスキリング云々は的外れな政策で、無業者、孤立などもっと掘り下げた議論が必要なのにトンチンカンな方向に進んでいてやばいと感じる人は多いのではないかと思います。
こうしてみると、貧困に陥って抜け出せなくなる社会システムなら、生きるために犯罪やっても許容されると思う人が増えるとまずい気がします。
明後日の方向でこの問題に取り組む社会と、今生活の向上がほしい氷河期世代からリーマン世代の意識のギャップが結構深刻で、これが堕ちていく日本になるのか、大衆の意識が変わって発展していくのか注意深く見ていきたいところです。
まとめ
ざっくりとではありますが、就職氷河期世代についてまとめました。
実際は大変なのは就職氷河期世代だけでなく、リーマンショックまで就職活動をしていた世代は、賃金的に割を食っていて、その中の数%がNEETやSNEPといった働かない人や引きこもりになっているわけです。
また日本社会は転落すると、加齢とともに這い上がるどころか、どこまでも転落する仕組みなので、この仕組みに恨みを持っている人は上記世代では結構いると思います。
この課題について社会は棄民扱いして放り捨てるのか、それともこの問題に真剣に取り組んで治安の悪化を防ぐのか政治と現実の問題を冷静に見ていきたいと思います。
ご参考になれば幸いです。
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