個別案件ごとに統計を使って投票率の推移を見る本
松林哲也著「何が投票率を高めるのか」を読みました。
結論から言うと、女性議員の参入、新党(泡沫政党ではない)を交えた選挙など、色々な環境変数を個別に統計で分析してその結果投票率が高まったのか、否かという分析をして、最終的に「この分析はこのような課題があるよね」というまとめをしている、論文形式の200ページにわたる本です。
このような論文形式は徹底したバイアスを取るための解説も丁寧にしていて、論文形式と統計という難しそうな要素をなるべく外して読みやすさを重視していたので、選挙自体難しそうという人でも読みやすい内容となっています。
とはいえ、個別案件としてみるのは面白いのですが、これらには当然複数の要因が選挙という行動に駆り立てるため、もっと難しい内容を期待されていた人は参考文献を基に色々読む方がよいと思います。
環境、新規参入など色々な角度から分析
投票において、それをするというコストを徹底的に0に近くすれば投票率が上がるのではないか?という問題点や、泡沫政党ではない新党が競争相手となって選択の幅が広がるという要因を上げて、投票率を統計的手法でまとめています。
結論は本に譲るとして、コラムも本書はいくつか紹介しており海外の選挙事情も多少載せています。
超円安になって海外に行きづらくなった現状、読書を通じて海外事情も加味してコラムを載せているのはありがたいと思うと同時に、「海外ではこんなことや、政党の心理策として選挙制度をうまく誘導している」といったこともわかります。
退屈だと思う人は各章の詳細な分析を読み飛ばして、本論と結論だけ読んでも教養が深まるのでおすすめです。
まとめ
投票率を高めるために個別の要因を、統計を使って論文形式で分析した本なのでエンターテインメント性は皆無です。
しかし教養を深めるという点では、非常に勉強になりまた海外の選挙や政党の思惑がコラムとして載っていて個人的には楽しめました。
これを複合的に分析するとどうなるのか?という疑問を持ちたくなりますが、学術的にはそれは難しいためそれ以降は個人で勉強してくださいということになります。
個別要因として、投票に行くまでの心理的コストをどう減らすのか?、競争相手を増やすことで公平な選挙ができるのではなど、多方面で議題をあげているので選挙に興味があり、学術的な解決方法を知りたいかたにはおすすめです。
ご参考になれば幸いです。
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