【書評】日本の電機産業はなぜ凋落したのか

書評
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日本の電機産業が凋落した5つの大罪

今回は桂幹著「日本の電機産業はなぜ凋落したのか」です。

結論は著者がTDKのサラリーマンという、伝統的日本企業に勤めていたことと還暦くらいの年齢であるため、良くある自己啓発本の否定部分にスポットを当てて書いた本という印象です。

伝統的日本企業のサラリーマンを勤め上げると、なぜこんなにどこにでもあるような内容の本になってしまうのか不思議でなりません。

ちなみに著者自身も、リストラされる側にかけた言葉が優柔不断で、いかにも伝統的日本企業のサラリーマンというイメージで書いています。

中身は良くある頭の良いサラリーマンが書く内容

本の中ですが、日本企業が凋落した5つの罪として書いていますが、著者自身もそれに加担していたことを経験談から書いているので、説得力がありません。

5つの罪とは以下のことを指します。

  1. 誤認の罪
  2. 慢心の罪
  3. 困窮の罪
  4. 半端の罪
  5. 欠落の罪

詳しくはネタバレになりますので、多くは語りません。

太平洋戦争のときもそうでしたが、日本人はちょろっと神風が吹いて運良く勝負に勝つとそこで天狗になってしまう癖があるようです。

また話は1980年代から1990年代のことを指しています。

この頃よく考えると、松下幸之助は1980年代で80代後半なのでともかく、ソニーの盛田昭夫や井深大は、ITバブルの少し前で亡くなっています。

時代背景から70代くらいで、このITの波を薄々感じていたはずです。

この2人はこのITの波が来たとき、どうビジネスを考えていたのかが気になります。

他の日本人と同様に、決断しないで沈思黙考していたらいかにウォークマンを作ったとしても、後年うまく歴史を書き換えたと思われても仕方がない気もします。

ウォークマンなどの旧技術のインパクトだけで世論から尊敬の念を浴びて、肝心のITはだんまりしているということも考えられ、ここは闇に葬られています。

バブル崩壊とITが急速に発達した時期が重なったのは、日本にとって運がないのは事実ですが、マインドまで負け癖をつけた当時の現役世代は、このことをどう思っているのでしょうか。

ツッコミどころが結構ありますが、他は自己啓発本の敗因分析と同じで新鮮味が感じられませんでした。

もう一歩踏み込んだ考察が欲しかったです。

例えば上記のちょっと勝ったくらいで、天狗になる日本人の心理の真相を分析するなどが読者が求めるものではないでしょうか。

目新しいところはビジョンのところくらい

そんな中で自分が目新しいと思ったのは、未来へのビジョンを描けない経営者が大半だったということは共感できます。

自己保身に走る人、曖昧なビジョンでうまく煙に巻いている経営者がこの時代多かった気がします。

事例では著者の親がシャープ、自身がTDKなのでこの2つの事例が多いですが、あとの企業は新聞や雑誌の切り抜きみたいです。

今も不確定要素が多い世の中で、知識のカーストがどんどん広がっている中、政府と大企業の経営層は迷走しているのはこの平成、令和を通じてよくわかります。

もうこのような昭和の思考を押し付けるのをやめることから始めないと、日本はどんどん沈没していくでしょう。

まとめ

雑誌や新聞の切り抜き記事を色々ツギハギしてできたような本になっています。

著者は1960年代の生まれなのに、この程度の内容で企業を批判しているだけではなく、自分自身もその波に迎合していたことを考えると、よく恥ずかしくもなくこの本が出せたなというのが感想です。

権威というものがいかに売上をある程度、上げる力があるのかというのをまざまざと見せつけられた感じもしました。

ただビジョンに関しては、次の一手を指せなかったというところだけが大半の企業にあったというのは、少し新鮮でしたが多分自分がそこを中心に本を読まなかっただけのことでしょう。

エリートコースまっしぐらの人が書く本は、皆似たような内容でがっかりします。

今後は生い立ち含めて、本を選ぼうと思った次第です。

ご参考になれば幸いです。

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